2010年10月31日日曜日

Jazz - Queen(1978)

 LPの付録に付いていたポスターを見て、目が点になりました。現代のLady Godiva("Don't Stop Me Now"の歌詞に登場します)よろしく全裸の"Fat Bottomed Girls"が公道で"Bicycle Race"をしているではありませんか。
 「なんじゃ、こりゃぁ」と思いつつレコードに針を落とすと、いきなり♪イ~ブラヒ~ム("Mustapha")とアラビア語らしきフレディーの熱唱が聞こえてきました。そこで再び「なんじゃ、こりゃぁ!?」。
 Beatlesの名盤になぞらえて「QueenのWhite Album」という人もいるそうですが、確かにごった煮的な雰囲気はありますね。曲調も今までとは少し変わって来ています。女の子にキャーキャー騒がれるバンドから、もう少し上の層を狙ったような感じ。ただしタイトルの"Jazz"は「大人向けの音楽」ではなく「くだらないもの」という意味だとか。皮肉まじりの歌もあったりして、わたしは彼らの作品の中では一番好きなアルバムです。
 ところで、「ママ。僕のあのポスター、どうしたでしょうね。」

Primitive Love - Miami Sound Machine(1985)

 映画「サタデー・ナイト・フィーバー」(Saturday Night Fever)の日本公開が1978年。私が大学生の頃でした。映画も観ましたし、つきあいで「デスコ(笑)」にも行きましたが、あまり「フィーバー」した憶えはありません。草食系男子だったつもりはないのですが、♪山男にゃ惚れるなよ~と歌われた山岳部員だったので街の遊びが苦手でしたし、なんとなくロックに対してディスコミュージックを下に見ていたような感じもありました。
 それがある日、このアルバムからシングルカットされた"Conga"のプロモーションフィルムをテレビで見ていっぺんに虜になってしまいました。もう会社員になり結婚して子供もいたので、踊りに行ったりはしませんでしたが、なにかむしゃくしゃすることがあった時、やさしいヒーリングミュージックを聴くよりもラテンのリズムで頭を真っ白にする方が断然楽しいと気付いたわけです。
 Amazonで見るとCDは廃盤になっているようですが、PVはYouTube等で見ることができます。何か辛いことがあったら、ちょっとのぞいてみてください。

Orinoco Flow (Sail Away) - Enya(1988)

 それまで「ケルト」という言葉は、様々な妖精たちが登場する神話の世界でしか聞いたことがありませんでした。エンヤの実質的な世界デビューアルバム"Watermark"を手にした時、「ケルト音楽」というキーワードを聞いて、その不思議な音楽は神話の世界からやってきたのだなと妙な納得をしたのを覚えています。
 ポップスやクラシックといった商業的なジャンルに括るには違和感があるけれど、宗教音楽や民俗音楽として特殊な世界に閉じこめてしまうのもちょっと違う。静けさと荘厳さに包まれた演奏に、心が洗われるような気がしました。
 まだ、ヒーリングミュージックとしてケルト音楽が世界に広まる前のことです。
 アルバムの中では一番ポップスに近い雰囲気のある"Orinoco Flow"がヒットしましたね。題名にあるオリノコ川はカリブ海に注ぐ南アメリカ第三の大河です。何で南米なんだろう。それが今でも謎です。
 元サッカー日本代表の中村俊輔が所属していたスコットランドのチームの名前は「セルティック」(Celtic F.C.)。「ケルト人」「ケルトの」という意味です。また新しい「ケルト」を知って、自分の世界の狭さを痛感しました。

2010年10月25日月曜日

ナナン - 小野リサ(1990)

 昔、ワインのCMでかわいい女の子がギターをつま弾きながら歌っていました。今までに聞いたことのないしっとりとした歌。それが私のボサノヴァとの出会いでした。その歌がこのアルバムに集録されている"Passeio nas Estrelas"(邦題:星の散歩)です。
 その頃よく聴いていたAntena(Isabelle Antena)が、ボサノヴァの名曲「イパネマの娘」をカバーしていたのですが、そもそもの原曲を聴いたことがなかったのでピンと来ていませんでした。それが、ブラジル生まれの彼女の歌を聴いて、「あぁ、これか」と合点がいったのです。
 夕方の、少し風が涼しくなった海辺。昼間の喧騒が去った海の家みたいなところで、今日一日の楽しかったことを思い出しながらぽろりぽろりとギターを鳴らしながら歌う人。膝を抱えて聴いている子供。背を向けて椅子に座り、海を見ながら葉巻を吸っているけれど、耳はしっかりとこっちを向いている初老の男。少し離れて砂浜に立っているカップル。そんな風景が浮かんできます。
 リオのカーニバルの熱さとは別の、やさしくて安らかなブラジルが感じられる一枚です。

2010年10月24日日曜日

Maluhia - Keali‘i Reichel(2006)

 毎年、一、二枚のクリスマスアルバムを買っています。お決まりのJohn LennonやWham!が入ったオムニバス盤もありますが、やっぱり一人(一組)のアーティストがオリジナルとトラディショナルを上手に組み合わせて録音したものが良いですね。
 これはハワイのアーティストによるクリスマスアルバムです。ハワイ語と英語、それぞれの言葉でしっとりと歌われるクリスマスソングが心にしみます。最近はハワイ文化のスピリチュアルな面が取り上げられて、「癒しの島」などと呼ばれているようですが、このアルバムにもそんな心休まる感じがあります。
 パーティが終わったあとの夜の余韻の中で、ソファーに深々と沈み込んで聴くと、今年一年の思い出が走馬燈のように浮かんでくるにちがいありません。

2010年10月23日土曜日

Life in a Northern Town - Dream Academy(1985)

 レコードもCDも持っていないし、そもそもこれ以外にこのグループの曲を聴いたことがないのに、たまに聴く機会があると妙に懐かしくつい一緒に口ずさんでしまいます。
 ♪Ah hey ma ma ma …
 彼の地のことは詳しくありませんが、イギリスで北の町というとどの辺のことをいうのでしょうか。曲の調子からはコローが描くようなセピア色の田園風景が思い浮かびます。でも、歌詞からイメージされるのは厚い雲がたれ込める、栄光の時代を過ぎた工業都市。鬱屈した時を過ごす若者が、その思いを爆発させる瞬間があの、hey ma ma ma …の合唱です。英国サッカーの熱烈な応援風景もダブって見えてきました。
 あっ、この感じ、不況の中ワールドカップに湧いた最近の心象風景にぴったり来るかも。
 オーボエとティンパニーが効果的に使われていて、アコースティックでありながら静かなだけではない、静と動を見事に調和させたメロディーがいつまでも耳から離れません。

2010年10月19日火曜日

黒船 - Sadistic Mika Band(1974)

 中坊の頃は単純に洋楽がカッコイイと思っていました。高校に入ると、少し通ぶって見たくなります。そんな時に出会ったのが日本のロックバンド、クリエイション、四人囃子、カルメンマキ&オズ、そして加藤和彦(トノバン)率いる"サディステイック・ミカ・バンド"でした。
 今で言うJ-POPのような洋楽風味の歌謡曲ではなく、本当のロックがここにあるぜ。そんな風に粋がって友だちと話した憶えがあります。
 4つのバンドの中ではサディステイック・ミカ・バンドが一番無難というか、ポップスに近い雰囲気がありましたね。トノバンの人柄が表れていたような気がします。
 2006年に木村カエラをボーカルに迎え、"タイムマシーンにお願い"が再録されてビールのCMで流れていたのを懐かしく聴きました。あの曲をイメージしてこのアルバムを聴くと、Pink FloydのEchoesのような静かな一曲目にちょっと面食らいます。それも束の間、曲のイメージはめまぐるしく変わり、畏れ多くもBeatlesのSgt.Peppers…を彷彿とさせるような緩急をつけた構成で、ぐいぐいとアルバムの終盤まで引っ張られてしまいます。何度聞いても飽きることがありません。
 「オヤジの繰り言」ではありますが、70年代初めの日本のロックシーンを思うと、最近の音楽はどれを聞いてもイマイチな感じがぬぐえません。

2010年10月16日土曜日

The Joshua Tree - U2(1987)

 TVで「世界平和のために」みたいな番組が作られると、"Imagine"(1971)が流れる事が多いですよね。私自身、この曲もJohn Lennonも好きなのですが、意地悪な言い方をすると、いわゆるヒッピー世代の連中ってまわりでワイワイ騒いでいるだけで、行動力はイマイチじゃないの?と思ってしまう事があります。
 それに対して'80年代以降のミュージシャンたちは、Band Aidを初めとして多くのプロジェクトで具体的な成果を出しています。これは評価できる事だと思います。
 そのなかで中心的な役割を果たし、ノーベル平和賞候補にもたびたび名前が挙がるBonoは、このアルバムの中で♪I Still Haven't Found What I'm Looking For と歌っています。彼が探し求めているものは、真実の愛か、神による救いか、世界平和なのか。ミュージシャンとしても活動家としても大きな成果を上げている彼が、いまだに見つけられないものって何なんだろう。その志しの高さには頭が下がります。
 私も時々、"I Still Haven't Found What I'm Looking For"とつぶやいてみる事があります。ただしそれはBonoとは違って、この年になってもまだ人生に迷っているという恥ずかしい理由からなのですけれど。

2010年10月13日水曜日

Immigrant Song - Led Zeppelin(1970)

 あああぁ~って、ターザンじゃないんだから…と苦笑しつつも、この曲嫌いじゃないです。
 わたしは、Freddie Mercury (Queen) や Steve Perry (Journey) などの朗々と歌い上げる系のロックボーカリストが好きなのですが、ロックを聴き始めた最初の頃は、他のロック少年と同じようにギター志向だったのです。それがこの♪あああぁ~で吹っ飛びました。今風にいえば、「Robert Plant、マジやべぇ」ってところでしょうか。やっぱ、ロックは叫びだぜ。
 もちろんJimmy Pageのギターも「マジやべぇ」です。
 色々な評価はあると思いますが、彼らの曲で私が一番好きなのはPresence(1976)の"Achilles Last Stand"。あの全力疾走感には、いつ聴いても、何度聴いても鳥肌が立ちます。そんなゼップに出会うきっかけになったのが、この♪あああぁ~でした。
 

2010年10月11日月曜日

Hotel California - Eagles(1976)

 1969年には荒野をぶっ飛ばしていたイージー☆ライダーたちも、目はしょぼしょぼ、頭は重くなってもう外を走り回る元気はなくなってしまったのですね。ホテルに閉じこもって踊り続ける彼らにとって、過去は忘れたいものなのか、あるいはいつまでも美しい思い出としてとっておきたいものなのでしょうか。
 あまりにも有名なこの曲に余計なコメントは不要ですね。みなさんそれぞれのホテルカリフォルニアがある事でしょう。
 哀切きわまりないメロディーも印象的ですが、暗喩に満ちた歌詞も気になります。つたない英語力を駆使して、何度も何度も読み返しました。昔は♪Take it easyとお気楽に歌っていた彼らに何があったんだろうかと。
 今でも時々、気がつくと夜の闇に向かってつぶやいている自分にハッとする事があります。
 I had to find the passage back to the place I was before. と。

2010年10月10日日曜日

Gontiti

 たとえば天気予報とか、ニュースの合間の季節の花を紹介する映像とか、旅番組ののどかな景色に感動するシーンとか…、きっとどこかで彼らの音楽を聞いたことはあるはず。イージーリスニングでも、ジャズでも、ポップスでもない、もちろんただのBGMでもない穏やかな(時に軽快な)ギターの響きが素敵なグループです。
 彼らの音楽が不思議なのは、何度聞いてもメロディーを覚えられないこと。アルバムを聴いていて、今が何曲目なのかわからなくなってしまうこと。という以前に、聴いていたことを忘れてしまうこと。
 こうしてBLOGを書いたり、コーヒーを飲んだりしていて、ふと気がつくと「あっ、ゴンチチかけてたんだっけ」と思い出す。そんな音楽です。
 右の写真で紹介しているのは、1997年発表の"DUO"。ゴンチチは、"ゴン"ザレス三上と"チチ"松村、二人のギタリストのユニットですが、このアルバムではタイトル通りバックミュージシャンや打ち込みを使わないふたりのギター演奏をたっぷりと聴くことができます。

2010年10月9日土曜日

Fly Like An Eagle - Steve Miller Band(1977)


 前回紹介した"Echoes"の冒頭は、♪Overhead the albatross hangs motionless upon the air
 大海原を見下ろして悠々と漂うアホウドリの姿が目に浮かびます。
 スティーブミラーが、♪I want to fly like an eagle to the sea と歌ったのは、もしかしたら「鷲のように猛スピードで飛びたい」ということだったのかもしれません。けれど、静かなイントロから始まるこの曲を聴いてわたしが思い浮かべるのは、グランドキャニオンの上空を悠然と飛ぶ大鷲の大きく羽を広げた姿です。"Echoes"の山版といった感じでしょうか。
 せせこましい日本にいると、時々、バカみたいにあっけらかんと広いアメリカの景色のなかに自分を置いてみたくなりませんか。そんな時にはこの曲を聴いて、荒野を疾駆するEasyRiderたちを見下ろしている気分を味わって見たらどうでしょう。
 ところで、"F"でもうひとつ外せないのがSteely Danの"FM"。良い曲です。この曲は同名映画のテーマ曲として作られたのですが、このサウンドトラックアルバムは、FM放送をテーマにした映画にふさわしく70年代後半のヒット曲を集めた内容になっていて、同時代に青春を送った人にはお勧めです。
 もちろん、Fly Like An Eagleも収録されています。

2010年10月5日火曜日

Echoes - Pink Floyd(1971)

 ピキーン、という不思議な音で始まるこの曲は、アルバム「おせっかい(Meddle)」のB面を埋め尽くす大作です。クラッシックでもないのにレコードの1面全部が同じ曲というのが新鮮でした。
 "Echoes"を始めて聞いたのは、ロック雑誌「ロッキング・オン」がメジャーになる前の渋谷陽一が解説をして、NHKで放送していたBBCの音楽番組でした。まだMTVが出てくる前、作り込まれた映像がプログレッシブ・ロックの世界観を的確に演出していて、さすがはロックの本場で作られた番組だと納得をしたことを覚えています。
 そこで聞いた"One of these days"(吹けよ風、呼べよ嵐)のベースや"Careful with that axe, Eugene"の悲鳴も衝撃的でしたが、この「ピキーン」の前にはすべてがくすんでしまいます。
 レコード盤を裏返し、レコードを傷つけないように息をこらして針を落とす緊張に続いて、針が盤まで落ちる数秒の沈黙のあとに来るこの音を聞くと、一気に不思議な音宇宙に引き込まれてしまいます。A面から連続するCDでは、この衝撃は薄れてしまうかもしれません。
 アルバムは"Wish You Were Here"の方が ―ジャケットデザインも含めて― 好きですが、曲としては"Echoes"がTheir Bestです。

2010年10月4日月曜日

December - George Winston(1982)

 「癒し・癒す・癒される」という言葉は、本来はキリストが癩者(ハンセン病患者)を救ったような宗教的な医療行為を指して使われてきました。だから、私はなにかというとこの言葉を連発する現在の状況が、あまり好きではありません。
 '80年代に始まったヒーリングミュージック(healing music)ブームの一翼を担ったのがWindham Hill Labelです。なかでもジョージ・ウィンストンは、人気のあるピアニストでした。たぶん、私が社会人になり、結婚して最初に買ったレコードがこのDecemberだったと思います。
 慣れない会社生活、結婚生活に疲れてこのレコードを手にとったのかもしれません。静かな冬の夜に吸い込まれていくようなピアノ演奏が、私の心を落ち着かせてくれました。
 超越的な神が施す「癒し」ではなく、同じ人間の仲間がわけてくれる「やさしさ」が与えてくれる「心の平安」。
 「12月」という題名の通りのクリスマスアルバムですが、最近になってそのことに気付きました。通年を通して聴ける素晴らしいアルバムです。

ChicagoII - Chicago(1970)

 ロックというのは、「おまえが好きだー!」とか「大人(社会)のバカヤロー!」と歌っているのだと思っていました。
 ところが、シカゴの最初期のヒット曲「長い夜」の原題は"25 or 6 to 4"。曲のサビでPeter Ceteraが叫んでいるのは、「4時25、6分前!」。もうすぐ朝だって言うのに、全然曲が出来ないよ~、ということらしいのです。この発見は驚きでした。
 まぁ、当時も今も洋楽の歌詞は言葉が聞き取れず、楽器のひとつとして聞いているに過ぎないので歌の意味に頓着はしていないのですが、日本の歌でこんな歌詞のヒット曲ってあったかなぁ?
 トロンボーンやトランペットを加えたブラス・ロックというバンド形式も新鮮でしたね。管楽器というのはクラシックやジャズで使うものだと思っていましたから。でも、ラッパを思いっきり吹くというのは、大きな声と叫ぶことに通じていて、ロックとしての違和感はありませんでしたね。
 Terry Kathのワウペダルを使ったギターも好きでした。彼の死後ポップな方向に流れていって、ChicagoX(1976)ではグラミー賞を取りましたけど、わたしには昔の方が良かったな。

2010年10月3日日曜日

The Beatles Box (2009)

 中学生になって、少し背伸びをしたくなって洋楽を聴き始めました。カーペンターズの歌にある通りの、♪When I was young / I'd listen to the radio / Waitin' for my favorite songs な夜を過ごしていたのです(from Yesterday Once More)。
 毎晩聞いていた「みのもんたのカムトゥゲザー」(文化放送)のオープニングテーマ曲は、Abbey Roadの"Come Together"。これが最初のビートルズ体験です。
 シュッ!というかけ声と主旋律?を奏でるベースライン。「カッコイイ」の一言でしたね。
 ヒットチャートには"Imagine"がランクインしていた頃。解散間もないビートルズの音楽が、毎日のようにどこかでかかっていました。ストレートなロックンロール、美しいバラード、屈折した曲やコミカルな歌もありましたね。どれが一番と言うことはなく、みな好きな曲ばかりです。
 月に1,000円かそこらだった小遣いをためて、"Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band"を買いました。LPレコードは1枚2,000円 ―今のCDとあまり変わりませんね― だったので、そんなにたくさんは買えません。
 去年発売されたThe Beatles Boxを衝動買いしたのは、その時の鬱憤を晴らしたかったからかもしれません。

2010年10月1日金曜日

Aja - Steely Dan(1977)

 「最初は"A"じゃ」と洒落たわけではありませんが、私の好きな音楽を紹介するのに、このアルバムは外せません。
 山口小夜子を撮ったジャケットが、まず素晴らしい。発売当時はまだCDではなくLPの時代です。30×30cmの大判ジャケットを塗りつぶす黒と、その真ん中にすぅっと入った一本の線の艶やかさ。このレコードを手にした1977年は私がはたちになる直前でした。ジャケットを見た瞬間に、これまでに聞いてきた音楽はガキのものだったな、なんとなくそんな思いを持ったことを覚えています。
 そして封を開け、レコード盤に針を落とした時の衝撃。これはロックなのでしょうか、ポップスなのでしょうか、それともジャズ?
 そのどれでもなく、どれでもある不思議で心地よいサウンド。タイトル曲"Aja"で、♪Chinese music under banyan trees と歌われた空気感 ―リゾートのリラックスした雰囲気と、東洋のストイックな精神世界― に酔っていると、B面 ―LP盤は表裏があって、途中に盤を裏返すという作業があったのです― 最初の"Peg"のポップな感じでちょっと目が醒めて、でもまたすぐに彼らの魔法の世界に取り込まれてしまう。
 Fusionとか、Adult Contemporaryなどという一言ではくくれない魅力は、30年以上経った今でも失われていません。

はじめに

 職場でどんな映画が好きか、という話になりました。過去にたくさんの映画を見て、おもしろいと思ったものも幾つもあるのに、いざ人に話そうと思うとすぐに題名が浮かびません。
 そんな折、TVをみていたら松任谷正隆氏と姜尚中氏が人生で思い出に残る10の音楽について話していました。
 私の人生を彩ってきた映画や音楽について、なにも話が出来ないのは寂しい感じがします。あやふやな記憶を呼び戻して、少し思い出話をしたくなりました。
 私はあまり思い入れが強い方ではないので、「人生で思い出に残る10の○○」というほどのものはありません。というわけで、「無人島にひとつだけ持っていくとしたら何?」という質問にかけてBLOGのタイトルを「無人島には持って行けない」としました。厳選の品ではなく、思いつくままに色々書いていこうと思います。選ばれる音楽や映画は古いものばかりになると思いますが、良かったら見てください。