2010年11月21日日曜日

Live From Texas - ZZ Top(2008)

 ロックバンドの基本は、ギター、ベース、ドラムのトリオ。その形を不動のメンバーで続けているのがZZ Topです。テンガロンハットにサングラス、サンタクロースのように長いひげと大きなお腹の二人組は、一度見たら忘れられないインパクトがありますね。前に並んだギターとベースの後ろ真ん中にドラムを置いたシンプルなスタイルで、小細工のないシンプルで骨太なブルースロックを聴かせてくれます。
 ギターとベースをくるりと回すパフォーマンスが有名ですが、映画"Back to the Future Part III"(1990)に出演した時もギターとベース、それに太鼓まで回してニヤリとさせてくれました。
 結成は1969年ですからもういい年ですよね。ますますひげが似合う年になりました。いつまでも元気なオッさんたちです。

2010年11月13日土曜日

Yesterday Once More - Now & Then(1973)


 カーペンターズを聴くと胸が痛みます。
 薄暗い教会の礼拝堂で、十字架に架かるキリストが描かれたステンドグラスから差す一条の光のなかにぬかずくわたしの姿が見えます。
 「神様お赦し下さい、本当はわたしはカーペンターズが好きだったんです。」
 このアルバムが出た時、Beatlesなどの話をしている仲間の一人がこれを買いました。それを「女みてーな歌聴いてんじゃねぇよ」と、みんなでバカにしたのです。でも、本当は、深夜放送でかかる"Sing"や"(They Long to Be) Close to You"(遙かなる影)などに耳をすましていました。ラジオの向こうから流れてくるカレンの歌声を、いつも心待ちにしていたのです。
 そういう訳なので、家にはこのアルバムはありません。でもカーペンターズの歌の数々はそらでも歌える(は、ちょっとウソかな)ぐらいに良く覚えています。
 "Superstar"(1971)も"Yesterday ~"同様、ラジオが歌の舞台になっていました。"V"のところでもラジオの話をしましたが、わたしにとって「ラジオから流れてくる音楽」には、特別以上の思い入れがあります。それを思うだけで、涙が出てしまうぐらいに。

Xmas! The Beatmas - Rubber Band(1994)

 あっという間に年の瀬が押し寄せてきます。この頃になると街のあちこちからクリスマスソングが聞こえてくるようになりますね。
 と言うわけで、"X"はXmas(Christmas)です。
 オールスターによるオムニバス盤も色々な味わいがあって良いのですが、やはり一人のアーチストが自分なりのアレンジによるトラディショナルと、オリジナル曲を組み合わせたアルバムがわたしは好きです。"M"のところでハワイアンのクリスマスアルバムを取り上げましたが、今回はBeatlesもとい、そのコピーバンドによる一枚です。
 "HELP!(四人はアイドル)"似のアルバムのタイトル(邦題)は、ずばり「四人はサンタクロース」。試聴サイトでイントロを聴くだけでもニヤリとすること請け合いです。良く知られたクリスマスソングばかりなのですが、ビートルズのあの曲、この曲にしか聞こえないものばかり。ロマンチックな"聖夜"向きではありませんが、楽しいクリスマスパーティにはオススメです。
 ところで、このCDのライナーノーツをモト冬樹が書いているのですが、彼の元相棒グッチ裕三がかつて出演していたハッチポッチステーション(NHK、1996-2005)は良かったですね。番組中のコーナー「江戸川サリバンショー」で彼が歌う「ボヘミアン・ラプソディ風犬のおまわりさん」や「ステイン・アライヴ風クラリネットをこわしちゃった」などの迷曲の数々には腹を抱えて笑い転げてしまいました。DVDあるのかな?

2010年11月11日木曜日

Wired - Jeff Beck(1976)


 歌の合間のギターソロで聴衆を釘付けにするものの、ふだんはボーカルの後ろに隠れていたギターが主役に躍り出た、全編インストゥルメンタルの歴史的アルバムです。
 "W"の順番なので"Wired"を持ってきましたが、本当は前作の"Blow By Blow"の方がわたしは好きです。WiredはJan Hammerの色が強すぎて、なんかなぁ、って感じ。ジャケットイメージの違いが音にも出て、Wiredは派手で商業的、Blow By Blowは通好みな感じがします。
 まぁ、どっちにしても当時のギター少年たちは、この二枚を聴いてBeckにあこがれましたね。わたしはギターを弾けませんが、Beckすげぇ、神!(当時はそんな形容詞はありませんから「カッコイイ!」ですね)と思って繰り返し繰り返しLPを聴きました。ロックからフュージョンやジャズに興味を広げていくきっかけを作ってくれたアルバムでもありました。
 それにしても"Blow By Blow"発表当時の邦題「ギター殺人者の凱旋」はひどかったですね。

2010年11月10日水曜日

Video Killed The Radio Star - The Buggles(1979)


 この歌を超意訳すれば、「新しいテクノロジーが古いものを駆逐していく。でも、僕には昔の方が良かったよ。」となるのでしょうか。
 年をとると懐古的になるものです。でも、そんなに老人にならなくても「昔は良かった」と思うことはありますよね。嵐よりV6が良かった。それよりもSMAP。少年隊、たのきんトリオ、いやいやフォーリーブスでしょ。みたいな。あれ、違うかな。
 この題名をつけた時点で、ある程度のヒットは約束されたみたいなものだったかもしれません。さらに、ノイジーなラジオから聞こえてくるかのような歌声も、この曲を印象的なものにしました。皮肉なことにこのエフェクトには、歌詞のなかであまり良く扱われていない"by machine and new technology"が使われています。
 CDはLP(アナログ盤)を駆逐しましたが、Video(TV)はRadioを駆逐していません。もしかしたら、さらに新しいメディアが登場してもラジオは残るかもしれませんね。似たような例は他にもあるかもしれません。
 時代の変わり目ごとにこの歌が思い出されて、そのたびに「あれ、まだRadio Starは生きてるぞ」と思うのでしょうか。
 そして、やっぱり古くても良いものは残るんだよ、とちいさくつぶやくのですね。

2010年11月8日月曜日

Mapa - Uakti(1992)

 「ブッシュマン」という映画(The Gods Must Be Crazy(1981))で、アフリカ人の主人公は舌を鳴らすような音の混じる言葉(コイサン語)を話していました。今までに聞いたことがないばかりか、想像することも、真似することもできない不思議な言葉です。
 このアルバムを聴いた時、このコイサン語の語感を思い出しました。あの舌打ち音が聞こえるわけではありません。「今までに聞いたことがない」の度合いが、コイサン語と同じぐらいわたしの知識・経験からはずれていたのです。
 試聴できるサイトが見つからず、アルバムもほとんど廃盤になっているらしく、彼らの不思議なサウンドを言葉だけで伝えるのはとても難しいです。既製の楽器を使わない原始的な音楽は「○○のような」と例えることもできません。ジャケットには彼らお手製の楽器の図解が描かれていますが、どれがどの音を出しているのかは謎。全く説明になってませんね(苦笑)。
 アマゾンの密林の奥では、こんな音楽が流れているのでしょうか。そんな感じがする音楽です。

※ その後、MP3ダウンロードで試聴・購入できるようになったので、リンクを貼り替えました。

Time & Tide - Basia(1987)

 二枚目のアルバムからヒットした"cruising for bruising"が、一時期Sony HandycamかなんかのCMで流れていましたね。そこではじめてBasia本人の映像を見たのですが、このデビューアルバムの東欧っぽい(?)雰囲気がウソのように垢抜けていてビックリしました。本人もそう思ったのかどうか、現在発売されてるバージョンではジャケットの写真が変わっているようです。
 おしゃれサウンド的な取り上げ方をされることが多いようですが、このアルバムの時には、ジャケット写真のとおりの毅然とした雰囲気で堂々と歌っている感じがありました。サンバやボサノバ調の曲もそれほどラテンフレーバー満載というわけではなく、ノリの良いポップスでもけだるい雰囲気漂うジャズでもない、色々な要素を取り入れてなんというかイイ感じに仕上げています。
 伸びやかでハリのある歌声が印象的でしたね。

2010年11月1日月曜日

The Sounds of Silence - Simon & Garfunkel(1964)

 彼らのラストアルバム「明日に架ける橋(Bridge over Troubled Water)」の発表が1970年でしたから、Beatlesと同じくS&Gは過去の名曲として聴いていました。洋楽を聴き始めた1970年代前半、CBSソニーが立て続けにS&Gのベスト盤を出してプロモーションをしていたので、ラジオから毎日のように流れてくる「コンドルは飛んでいく(El Condor Pasa (If I Could))」や「サウンドオブサイレンス(The Sounds of Silence)」に耳を傾けていたのです。
 生意気に三木清の「人生論ノート」などを読んで、「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にあるのである。」という言葉に頷いていたりしていた頃です。
 (I saw...)
 People talking without speaking.
 People hearing without listening.
と歌われる、現代社会において失われたコミュニケーションについて、深夜放送を聴きながらあれこれヘタな思索をしていました。
 もう難しいことを考える知恵も情熱も薄れてしまって、今ここでサウンド・オブ・サイレンス論を述べることはできませんが、半世紀近く前のポール・サイモンの予言は今も生きている、それだけは確かに言えると思っています。

Running on Empty - Jackson Browne(1977)

 映画「未知との遭遇」(Close Encounters of the Third Kind)の公開は、このアルバムと同じ1977年。このジャケットと同じように、真っ直ぐな道が地平線に向かって伸びている絵がポスターに使われていました。ロイ(Richard Dreyfuss)はその道の先に光り輝く宇宙船を見つけましたが、ジャクソン・ブラウンはまだなにかを探して走り続けています。
 ある時、冬の北海道を旅行していて原野の中にまっすぐ伸びる道を見た時、この歌が頭の中に浮かんできました。まだ自分の進む道を決めかねてうろうろしていた時です。自分はどこに向かって走っているんだろう。いや、走ってさえいないんじゃないか。そんなことを誰もいない冬空の下で自問自答したのです。
 "Take It Easy"を共作した盟友Eaglesは、この前の年にHotel Californiaに囚われてしまったけれど、オレは走り続けてるよ。これで良いのかと自問することもあるけど、走っていくしかないんだよ。
 この年になっても道に迷い続けている私は、そんな彼のメッセージを応援歌にして今ももがき続けているのです。
 "Confusion will be my epitaph"(Epitaph by King Crimson,1969)とつぶやきながら。