2014年1月28日火曜日

Big Fish - Tim Burton (2003)

 娘が孫の育児をしていて発見をしたそうです。
 「お父さん!子供をあやしながら適当な歌を作って歌うのって、うちだけらしいよ。」
 後日、似たような相談事をどこかの投書欄で見たことがあるので、これがわが家に限ったことではないのは明らかなのですが、少なくとも娘の周りにはそういう人はいないらしく、親と同じように口からでまかせの歌を歌っていたら驚かれたというのです。
 寝る前に聞かせる昔話なんかもけっこう適当に話していたので、それも笑い話になりました。
 うちの子たちはそれを自然に受け止めていたようですが、この映画では父親が繰り返し語って聞かせるほら話(わたしのでまかせ歌や話とはレベルが違いますが…)がもとで、父子の間に溝が生じてしまいます。その溝が埋まらないままに時が過ぎ、とうとう父に最後の時が訪れます。自身も父になろうとしていた息子は父と和解できるのか。
 最初に見た時には、いい話だったとは思ったものの、アメリカ映画には良くある父子和解映画の一つだな、ぐらいにしか思っていませんでした。それを最近見直して、これはティム・バートンの最高傑作かもしれない、とまで思うようになったのです。
 自分に孫が生まれたこと、親が年老いてだんだん先のことを考えざるを得なくなってきたこと。そんなこんなをめぐって過去から現代そして未来へと続いていく家族の絆のことを意識するようになったわたしの心のツボに見事にはまってしまったようです。
 わたしはあんな風に自分の父を見送ることができるだろうか。わたしはあんな風に残された人たちの心の中に残れるだろうか。そんなことを考えながらも、ラストシーンからエンディングロールの間、わたしはニコニコが止まりませんでした。涙ではなくニコニコ。とっても幸せな気持ちがあとからあとからあふれてくるのです。

 わたしは今でも子供向けの絵本が好きです。大人向けの小説には恋愛と殺人しかない(極論ですが)のに、絵本には愛も友情も冒険も不思議も謎も勇気も悲しみも夢もおいしいものもきれいなものも友達も恐竜も宇宙人も、そしてなんでもない日常も、あらゆるバリエーションのお話が詰まっていてワクワクさせられるのです。
 ティム・バートンの映画はそんな絵本の楽しさに似ています。この映画でもほら話の部分は内容もビジュアルも絵本そのものでした。でもそれが境目なく現実とつながっている。そこが彼の真骨頂です。そして、絵本が子供達に語りかけるように大切なことを教えてくれるのです。
 彼にしか作れなかった映画。大げさかもしれませんが、そんな気がします。