2011年2月10日木曜日
The Long Goodbye - Robert Altman(1973)
昔、ハードボイルドにあこがれていたことがあります。
「男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」(レイモンド・チャンドラー「プレイバック」)なんて言う台詞を呟きながらギムレットを飲んだりしていました。若気の至りですね。
エリオット・グールド演ずる私立探偵フィリップ・マーロウがこの映画のなかで見せる仕草で、「自分にはできないけど、いつか真似してみたい」と思い続けているものがあります。
ひとつはマーロウが列車のなかを歩いていくシーン。大きな荷物を網棚に載せようとして苦労している人の横を通ったマーロウは、声もかけず、足を止めることもなく手を出して荷物を棚に押し込んでしまいます。そしてお礼の言葉も聞かず、というより何事もなかったかのように次の車両へ移っていきます。親切をしたと言うよりは、邪魔だからどけたのだと言うような顔をして。
もう一つは、久しぶりに事務所に帰った彼が、机の上にたまっていた郵便物を一切見ることもなくなぎ払って、ゴミ箱へ放り込むシーン。わたしは絶対に買うはずもない商品のDMでも封を開け、請求書が来ればすぐにお金を払ってしまう小心者なので、とてもこんなことはできません。
もしかしたら違う映画の思い違いかもしれませんが、この二つのシーンが何十年経った今でも忘れられずにいるのです。
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