2011年12月26日月曜日

チャーリーとチョコレート工場(Charlie and the Chocolate Factory) - Tim Burton(2005)

 ティム・バートンの映画には、ちょっと不気味なキャラクターたちが沢山出て来ます。
 住人を追い出そうとする家主の幽霊、手がハサミになっている青年、ハロウィンの魔物たち、死人の花嫁、おとぎの世界の変人・奇人などなど。どれも恐ろしげではあるけれど愛すべきキャラクターとして描かれていますよね。
 ところが、この映画には、とてつもなく憎々しい嫌な性格の「普通の人間の子供たち(とその親)」が沢山登場します。彼等がいろいろな形でお仕置きを受ける、それがこの映画のメインのストーリーです。
 その仕置き人(?)を務めるのが、チョコレート工場の従業員ウンパルンパ。一応普通の人間ですが、全員同じ顔をした小人で未開の国からやってきたという設定になっており、彼の映画で活躍する異形のものたちの系列に連なるキャラクターです。彼等がお仕置きのたびに披露する歌と踊りがとても楽しくて、そのためだけに何度も見たくなってしまうほどです。
 ティム・バートンは、向こうの世界の魔物より、こっちの世界の人間の方がよっぽど嫌いなのでしょうか。

2011年12月25日日曜日

The Nightmare Before Christmas - Henry Selick(1993)

 今日はクリスマス。朝起きて、枕元にサンタさんのプレゼントはありましたか?
 多くの日本の人たちは、キリストの誕生日であるクリスマスではなく、お祭りとしてのクリスマスイブの方をメインイベントと考えていますよね。ですから25日になると、クリスマスツリーが門松に置き換わり、街は打って変わって静かで地味に装いを変えてしまいます。
 昔、婚期を逃した女性を「クリスマスケーキ」と揶揄する悪い冗談がありましたが、そのくらい、24日と25日の落差は大きく感じられます。私はそんな寂しいクリスマスの朝が昔から嫌いでした。
 以前、年末年始休みを利用してアメリカに旅行したことがあります。むこうではクリスマスから新年までを"Holiday Season"としてお祝いしますから、25日を過ぎてもクリスマスツリーやサンタクロースの飾りが街を彩っていました。なるほど私はこの方が好きだな、と思ったことを思い出します。
 さて、われわれとはまた別の意味でクリスマスを取り違えてしまったハロウィンタウンの面々が引き起こす騒動を描いたのがこの映画です。ちょっと怖くて不気味だけれど憎めないキャラクターたちが織りなす、せつなくて、でも最後には幸せな気分になれる物語はティム・バートン(原案・製作)の真骨頂ですね。ストップモーションアニメーションで生き生きと動き回るゴーストたちがキモカワいいです。
 クリスマスを過ぎても、是非! 何度でも観てください。

2011年12月24日土曜日

Season's Greetings - 山下達郎(1993)

 ホリデイ・アルバムをまだ何枚も紹介していないのに、もうクリスマスイブになってしまいました。最後の1枚は山下達郎です。
 曲を紹介される時に「あのJR東海のCMで有名な」と枕の付くことの多い"Christmas Eve (English Version)"が収録されていますが、本人もライナーノーツで「クリスチャンでもない私がクリスマス・アルバムを出すことに、どういう意味があるのか」?と言っているとおり、クリスマス以外の曲も含めた内容になっています。
 ところでそのCMですが、遠距離恋愛らしいカップルのクリスマスの夜がテーマでしたね。久しぶりに会う二人のときめきや不安をミニドラマ仕立てにして話題を呼びました。
 ことしは天皇誕生日からクリスマスまで3連休になって、家族や恋人と、いつもより幸せなクリスマスを過ごされるという方も多いのではないでしょうか。一方で、例年とは違った寂しい夜を過ごされる方もいることと思います。どんな境遇にある方にも、神様のお恵みが等しくありますように、そう祈らずにはいられません。
 さてこのアルバム、多重録音による一人アカペラコーラスで歌われる曲が何曲か入っています。歌詞は英語。英語のアカペラものと言えばマンハッタン・トランスファーなどが思い浮かびますが、一人で歌っているので声質が全部同じで英語も日本人の発音、選曲も欧米人の趣味とは少し違うようで、それがなんとも不思議な味わいです。ある意味、ホリデイ・アルバムに慣れていない方には聴きやすいかもしれません。「おしゃれ」とか「楽しい」というよりは、少し「厳粛」という方に針が振れるような聴き心地ですが、あくまでもポップな仕上がりです。
 それではみなさん、良いクリスマスをお過ごしください。

2011年12月20日火曜日

Vol. 2-This Warm December - Various Artists(2011)

 ハワイ出身のシンガーソングライターJack Johnsonが主催するブラッシュファイアー・レコーズの所属アーティストたちによるホリデイ・アルバムです。
 知っている人も聴いたことのある演奏もありませんでしたが、クラフト色の紙ジャケットを手にした時、タイトル通り温かい気持ちになれそうな気がしました。
 予感は的中。フォークなのかカントリーなのか、ジャンルはよくわかりませんが、山小屋で暖炉を囲んで歌っているようなアコースティックな演奏に心が和みます。
 Jingle Bell Rockなど数曲を除き、ほとんどがオリジナル曲なのでクリスマスシーズン以外に聴いても良いかもしれません。温かいコーヒーをマグカップで飲みながらどうぞ。

2011年12月18日日曜日

TRAIN-TRAIN - THE BLUE HEARTS(1988)

 泣いてしまいました。
 夜勤明けで帰ってきて、家族が出かけた後の家で食事をしている時、ふとTVをつけるとNHKのど自慢の年間名場面集をやっていました。そのハイライトに、被災地岩手県で開催された回の映像が流れたのです。
 被災者本人やその家族・友人、ボランティアで縁があった人などがそれぞれの思いを込めて歌います。土地の民謡であったり流行歌であったり、形は様々ですが、その歌には被災者への励ましや、被害にあった故郷への愛が満ちていました。どの歌も、まるでそのために作られたかのように、歌う人、聴く人の心に寄り添ってきます。

  世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより
  あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう

 若い男の人がブルーハーツを熱唱していました。わたしも昔、カラオケで歌ったことがあります。その時には、「ノリのいい歌だ」ぐらいにしか思っていませんでした。それを今日改めて聴いて、このフレーズに思わず泣いてしまったのです。
 何でもない日常が、いまはとても大切でいとおしいものだと感じられます。「ささやかな人生」とか「平穏な日常」とは対極にあるような激しい歌ですが、そういうものを守っていくために走っていこう(がんばろう)というメッセージに聞こえます。その激しさ(エネルギー)に未来への希望を感じます。
 本来の意味とは違う解釈かもしれませんが、今は、そう思って聴きました。

2011年12月11日日曜日

Snowbound - Fourplay(1999)

 タイトル曲を聴いた時、オリジナルを思い出すのに時間がかかりました。ほかのアーチストのホリデイ・アルバムでも、コンピレーション盤でも聴いたことがないのに、とてもよく知っている曲だったからです。
 こう言う時パソコンは便利です。iTuneでわたしのライブラリーを検索してみると、出て来た名前は「Kamakiriad - Donald Fagen」。
 え!? 言われてみれば確かにその通りなのですが、あれがクリスマスの歌だとは思ってもいませんでした。
 耳タコのクリスマスソングばかりではつまらないと、Steely Danにも縁のあったギタリストのLarry Carltonが選んだのかもしれません。おざなりな企画ものではどれも似たようなものになりがちですが、こういうところにアーティストの個性が出たものに出会うと楽しいですね。
 リラックスして聴けるスムースジャズ(昔はフュージョンって言ってたかな?)の佳品です。