2011年1月24日月曜日

めがね - 荻上直子(2007)


 「泣ける○○」という言い方がもてはやされるようになったのは、いつごろからのことでしょうか。"It makes you cry."ではなく、"You can cry with it."。成果主義的というか、欲望中心主義というか、おかしな例えになってしまいますが「抜ける○○」みたいに、作品鑑賞とは別な次元で本や映画をとらえているようで、私はこの言い方が好きではありません。
 泣いたり笑ったり叫んだり、疾走したり爆発したり、そういう騒々しさから離れて、この映画の中ではただただ平坦に時間が過ぎていきます。この映画で「泣ける」人はいないでしょう。退屈、ですらあるかもしれません。
 でも、その「何も起こらない」感が気持ちいいのです。あの不思議な“メルシー体操”にも惹かれます。
 仕事や人間関係がつらくなると、「南の島に行きたい」って言い(思い)ませんか。そんなときの気分にぴったりな映画です。

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