2011年11月10日木曜日

Twelve Monkeys - Terry Gilliam(1995)

 先日、東京電力福島第1原発事故による警戒区域内で行方不明者の一斉捜索が行われたというニュース映像に、無人の集落内を駆けていくダチョウの姿が写っていました。
 この映像、どこかで見たような…。
 そう、「12モンキーズ」で見た、高速道路を走っていくキリンの姿です。謎のウィルスにより人類の大部分が死滅したという未来社会を描いた作品のワンシーンに、津波と原発の被害によって人影の消えた福島の姿がダブって見えました。
 人類の滅亡を阻止するため、" ウィルス"発生前の時代にタイムトラベルする主人公がブルース・"ウィリス"って、アメリカにもオヤジギャグってあるのか?と思いましたが、"virus"の発音はウィルスではなくヴァイラスですから、Bruce Willisとは全く関係ありませんね(^^ゞ。
 それはともかく、この映画での、ブラピ(Brad Pitt,)の見事に"イッちゃってる"演技は良かったですね。イイ男役の多い彼ですが、演技の幅の広さを感じさせてくれました。同時期の"Seven"(David Fincher)と並んで、わたしの好きなブラピ映画のひとつです。
 もちろん、テリー・ギリアム監督の描く映像世界や幾重にも伏線の重なる脚本、ブルース・ウィルスの演技も魅力的。おすすめです。

2011年11月6日日曜日

Gattaca - Andrew Niccol(1997)

 突然ですが、孫が生まれました。「おじいちゃん」と呼ばれる年になったかと思うと、ちょっとショックですが、しばらくかわいい子供から遠ざかっていたのでうれしくもありますね。
 最近は胎内にいる時から性別がわかるので、生まれてくる時のハラハラがなくてつまらないような気がしていましたが、やっぱり生まれるその時にはどんな子が生まれてくるのか心配でドキドキしました。親でもないのに(^_^)。
 さて、この映画は、遺伝子操作によって生まれた優秀な「適正者」に、欠陥遺伝子が引き継がれているかもしれない自然妊娠による「不適正者」が差別される近未来の社会を描いています。未来といわず、現在の世界にもあり得そうで、ちょっと怖くなりました。
 ハンサムなジュード・ロウが、いかにも適正者という感じで出演していますが、彼が演じるジェロームは下半身不随の車椅子生活を余儀なくされています。不適正者の主人公は、彼から血液や尿などを買い取り、健康診断による検査をかいくぐって適正者になりすまし、宇宙飛行士になりたいという夢に向かって進んでいる、というお話です。
 神が造りたもうたものに間違いはない。世の中に「不適正」な人間なんていない。自分の運命は自分で切りひらくもの。夢は必ず叶う。…といった感じで、テーマはお決まりのヒューマニズム映画、と言っては元も子もありませんが、きれいな映像と落ち着いた音楽。登場人物たちも魅力的に描かれていてスクリーンから目を離せません。
 最後、ジェロームが選んだ運命に、胸が熱くなりました。

2011年11月4日金曜日

Blade Runner - Ridley Scott(1982)

 誰に聞いてもランキングの上位に入るSF映画の名作ですが、なぜかストーリーの細部を思い出すことができません。目に浮かぶのは酸性雨が降り続く陰鬱なロサンゼルスの街並み。芸者ガール(?)を映し出す巨大スクリーンとそれを取巻くケバケバしいネオンサイン、屋台の日本人の親父とハリソン・フォードの噛合わない会話のシーンばかり。それほどに、この映画が提示した未来観はショッキングでした。
 子供の頃思い描いていた、あのキラキラとした未来はどこに行ってしまったのでしょう。猥雑で混沌とした未来像を見せられて、わたしは途方に暮れました。
 住みづらくなった地球を出て、人々は宇宙で暮らすようになったという設定です。昔夢見ていた宇宙旅行や宇宙都市は実現しています。もしかしたら、宇宙に出て行った方の人たちの世界はキラキラしているのかもしれません。でも、それがすべてでは無いようです。
 残された人々の暮らす街は限りなくアジアっぽい。香港や東京の景色と大差はありません。未来は必ずしも明るくない。われわれは、明るい未来と明るくない未来、それぞれの社会に階層化される。そんな夢のないことを言うなよ、と自分でも思いますが、たぶんそう言うことなのです。
 バラ色の夢ばかりを描いてきた理科系に対する、文化系の皮肉な逆襲でしょうか。実際、地球温暖化や原発事故、繰り返されるテロ、収束しない国際紛争など、現時点ではまだ脳天気な未来像は描けそうにありません。この映画を見た30年前には、まだ、そこまで思い至りませんでしたが、今になってその意味するところがわかってきたような気がします。