2011年10月15日土曜日

川の名前 - 川端裕人(2004)

 私たちが住んでいるこの土地に雨が降ると、その水は必ずどこかの川に流れていきます。地表を流れていく場合もありますし、地面に染み込んだものは地下水脈を通して、下水に流されたものも処理場を経てどこかの川へ運ばれます。
 下水場に行ってしまうものは定かではありませんが、自然に流れていく限り、その行く先は同じ川。その川の名前が、その土地の住所になる、というのがこの本の題名の由来です。 「調布市」という住所は人間にしか通じませんが、「地球・日本列島・多摩川流域野川沿い」ならば動植物を含めて誰にでも通じる住所になると言うわけです。
 少年たちの一夏の冒険を描いたこの本は、乱暴にまとめてしまえば「映画「E.T.」(1982)と「スタンド・バイ・ミー」(1986)を合体したようなお話」なのですが、舞台となっている「川」に対する登場人物たち(もちろん作者含む)の関わり方と思い入れの描き方が素敵な小説です。
 「自然を大切に。川をきれいにしよう。」とよく言いますが、「なぜ?」と問われるとうまく説明できないものです。川の名前を考えることが、その意味を教えてくれるような気がしました。
 喇叭爺のこの言葉が心に残ります。
 『足もとを見よ、川の名前を考えよ、そして、遠くへ旅立ち、いずれ戻ってこい』

0 件のコメント: