2013年10月27日日曜日

Hawaiian Suite - Ohta-san (Herb Ohta、2002)

 あったことのない外国の方にメールを書く時に、名前に"Mr."を付けるか"Ms."にするか迷います。
 その点、日本なら誰でも「様」 ですむので便利ですね。海外の方でも多少日本の事情が分かっていそうなら、John Smith-samaと書くことがあります。
 ウクレレ奏者のHerb Ohta は、さん付けのOhta-sanで親しまれています。John Lennonn を Lennonn-san という人はいませんが、オータサンのあったかで優しい音楽を聴いているとついさん付けで呼びたくなる、それが自然に思えてくるから不思議です。
 さてこのCD、一曲目がピアノのイントロから始まって驚きます。あれ、ウクレレじゃないの?、ハワイじゃないの?
 JAZZYな演奏ですが、紛れもないハワイアン。ピアノ・トリオを従えて、素敵なウクレレ演奏を聴かせてくれます。
 ラグジュアリーなリゾートの夜、街に置いてきたあれこれも、昼間の浜辺の喧騒も、みんな忘れてオータサンのウクレレを聴きながら、ハワイの陽に灼かれて火照った体を冷ましましょう。明日は街に帰るのかな、それともキラウエアに溶岩を見に行きますか。
 いいえ、明日の話は明日のこと。今晩はオータサンの演奏に酔いたいの。そんな感じの音楽です。

2013年10月25日金曜日

Crosscurrent - Jake Shimabukuro (2003)

 ハワイのウクレレを聴いてのんびりしたいなぁ、と思っていると肩透かしを食わされます。肩透かしと言うよりはしっぺ返しと言うべきか。とにかく、世の中一般のウクレレのイメージと違うのは確かです。
 それをはずれと言うか当たりというかはあなた次第。わたしには当たりでした。
 ジミヘンとかジェフベックに憧れていたギター少年が、ウクレレを持ったらこんな感じになるのかな。でも、ハワイのゆるーい感じも残っていて、全力疾走しきれずに時々昼寝しちゃうみたいな、不思議なアルバムです。
 以前テレビ東京系で放送していた「空から日本を見てみよう」(現在はBSジャパンに移動)でもこの中から選曲されたBGMが使われていました。そんな、雲になって地上を眺めるような雰囲気のゆったりとしたイージーリスニングから、ハードロック風の曲まで幅広いアレンジの曲が、ちょうどイイバランスでまとめられています。なかでもChick Coreaの名曲"Spain"のカバーは、これがウクレレかと思わせる名演。必聴です。

2013年10月24日木曜日

Slack Key Jazz - Jeff Peterson (2005)

 寒くなってきたのでハワイの音楽でも聴こうかと思います。
 え、逆ですか。でもほら、昔はやった「夢のカリフォルニア」(California Dreamin'、The Mamas & the Papas、1965)は、木枯らしに凍えながら、暖かいカリフォルニアに行けたらいいなぁ、と夢見る歌でしたよね。
 同じ気分で南国ハワイの青い空を思い浮かべてみようかと思うわけです。
 とは言っても、さすがにフラダンスの気分ではないのでこの辺から。
 ハワイ音楽独特のスラックキーギターという奏法でJAZZのスタンダードナンバーをカバーしたアルバムです。そういう組合せなら秋の気分にもぴったりでしょ。
 どこかで聴いたことのある曲ばかりなのですが、スラックキーギターの独特のアレンジにかかると、みな初めて聴く曲のように感じます。渚に寄せる波のような、ココヤシの葉の間を抜けていくそよ風のような、ゆったりとした心地よい響きにうっとりとさせられます。
 ハワイの海風を頬に感じながら、特別な人と素敵なレストランでくつろいでいるような雰囲気になれる、かな。

2013年10月23日水曜日

老人とカメラ―散歩の愉しみ - 赤瀬川 原平 (1998)

 「口でははうまく言えないけれど、良いものはイイ」と思うことがあります。
 若いうちは何事も頭で考えて言葉や理論で説明しようと努力するのですが、それがうまくできず力尽きた時に、多少の敗北感を感じながらそう言うのです。
 年をとって頭がぼんやりしてくると、 はなから頭を使うのをやめて、あるがままを受け入れ、素直に感動することができるようになりました。それを赤瀬川さんは「老人力」と表現しています。
 ただぶらぶらと歩くだけだった散歩に、「トマソン」や「路上観察学」という芸術論や考現学の考え方を持ち込んだ彼も、老人力がつくと「路上で予想もしないものにぶつかり、(中略)カメラを構えてシャッターをパシン。頭が考えるのはそれからだ。」というような散歩をするようになりました。
 そうして集めた、頭よりも先に体が反応した景色(写真)に、頭とは別のところで考えたような文章が付いています。それが面白い、と言うか、感慨深い、と言うか、何とも不思議な味わいがあります。
 デジカメやカメラ付き携帯が普及して、誰もがスクープでも感動の絶景でもない普通の写真にちょっとした文章を付けてBLOGに発表するようになりましたが、この境地に辿り着くのはなかなか簡単ではありません。
 手本にしたくても真似のできない、でもいつかはこうなれたらいいな。そんなことを思わせる写真であり文章であり赤瀬川さんなのでした。

2013年3月8日金曜日

宇宙人東京に現わる - 島耕二 (1956)

 調布映画祭が始まりました。
 残念ながら土日は出勤なので金曜日の夜の会に、日本初の総天然色(つまりカラー)特撮映画を観てきました。あの岡本太郎が宇宙人のデザインをしたという評判だったのですが、クレジットでは「色彩指導」となっていました。今のカラー映画に慣れた目にはどこが太郎的なのかわかりませんが、当時の反応はどうだったのでしょうか。
 巨大なヒトデ型の宇宙人・パイラ星人が東京に現れます。彼らの目的は地球人に原水爆の開発をやめさせること。唯一の被爆国である日本の国民ならばわかってくれるだろうと期待していたのですが、その容姿が災いして話を聞いてもらえません。
 そこで美人歌手に変身して日本の科学者とのコンタクトに成功するのですが、今度は世界が日本の意見を聞いてくれません。
 地球を襲う流星Rが現れてやっと世界が危機に気づきます。ところが、世界各国の核ミサイルを撃ち込んでも流星を破壊することができません。世界中の核兵器を撃ち尽くしたところで、日本の科学者が発見した新元素を用いたミサイルでパイラ星人が流星を破壊し、地球は救われるのです。
 超B級のゲテモの映画かと思いましたが、なかなかに示唆に富んだ内容で驚きました。東宝のゴジラ(1954)に続いて、大映も宇宙人もので反核を訴えたのです。しかし地球を救ったのはその核をも越えるエネルギーをもった新元素だったという皮肉。戦後間もないこの時期ならではの作品でした。