2013年10月29日火曜日

From Here to Now to You - Jack Johnson (2013)

 明るいうちに仕事から帰って家でゆっくりしたいものです。満員電車に揺られてやっとこさ帰った家で、飯喰って寝るだけ、というのは寂しいじゃないですか。土日以外にも、趣味の時間や家族・友人との時間を取れるような生活がしたいです。
 夜勤明けの日は、ちょっと意味は違いますが、家に帰ってもまだ(と言うかもちろん)明るいので、日勤の日に比べて仕事の後の時間をゆったりと過ごせるような気がします。自転車通勤でいい具合に気持ちがスローダウンするのも良いのかもしれません。陽の光の下では、アコースティックというかオーガニックというか、自然でスローな雰囲気の時間を過ごすのが気分です。
 天気が良ければ庭にテーブルを出して、ビールでも飲んでぼんやりと過ごしたい気分になります。

 おんぼろのピックアップトラックをガタピシいわせながらヒゲ面の男が帰ってきました。夕飯まではまだ時間があるので、ポーチに腰をおろしてギターを弾いています。遊びに行っていた子供達も帰ってきました。お帰り、今日はいい日だったかい。高台にある家の前には広々とした海が見えます。水平線の向こうに、今、静かに日が沈もうとしています。
 そんな感じでJack Johnsonが歌っています(そんな感じ、です、あくまでもわたしの想像)。アコースティックな演奏にのせて静かに、優しく、そして楽しく。ささやかな日々の中の幸せなひとときが感じられる歌声です。

 おっと、ちょっとうたた寝をしてしまったようです。気がつくとギターを弾いていた彼がこっちを見て笑っています。にっこりと、優しく温かい笑顔でした。

2013年10月27日日曜日

Hawaiian Suite - Ohta-san (Herb Ohta、2002)

 あったことのない外国の方にメールを書く時に、名前に"Mr."を付けるか"Ms."にするか迷います。
 その点、日本なら誰でも「様」 ですむので便利ですね。海外の方でも多少日本の事情が分かっていそうなら、John Smith-samaと書くことがあります。
 ウクレレ奏者のHerb Ohta は、さん付けのOhta-sanで親しまれています。John Lennonn を Lennonn-san という人はいませんが、オータサンのあったかで優しい音楽を聴いているとついさん付けで呼びたくなる、それが自然に思えてくるから不思議です。
 さてこのCD、一曲目がピアノのイントロから始まって驚きます。あれ、ウクレレじゃないの?、ハワイじゃないの?
 JAZZYな演奏ですが、紛れもないハワイアン。ピアノ・トリオを従えて、素敵なウクレレ演奏を聴かせてくれます。
 ラグジュアリーなリゾートの夜、街に置いてきたあれこれも、昼間の浜辺の喧騒も、みんな忘れてオータサンのウクレレを聴きながら、ハワイの陽に灼かれて火照った体を冷ましましょう。明日は街に帰るのかな、それともキラウエアに溶岩を見に行きますか。
 いいえ、明日の話は明日のこと。今晩はオータサンの演奏に酔いたいの。そんな感じの音楽です。

2013年10月25日金曜日

Crosscurrent - Jake Shimabukuro (2003)

 ハワイのウクレレを聴いてのんびりしたいなぁ、と思っていると肩透かしを食わされます。肩透かしと言うよりはしっぺ返しと言うべきか。とにかく、世の中一般のウクレレのイメージと違うのは確かです。
 それをはずれと言うか当たりというかはあなた次第。わたしには当たりでした。
 ジミヘンとかジェフベックに憧れていたギター少年が、ウクレレを持ったらこんな感じになるのかな。でも、ハワイのゆるーい感じも残っていて、全力疾走しきれずに時々昼寝しちゃうみたいな、不思議なアルバムです。
 以前テレビ東京系で放送していた「空から日本を見てみよう」(現在はBSジャパンに移動)でもこの中から選曲されたBGMが使われていました。そんな、雲になって地上を眺めるような雰囲気のゆったりとしたイージーリスニングから、ハードロック風の曲まで幅広いアレンジの曲が、ちょうどイイバランスでまとめられています。なかでもChick Coreaの名曲"Spain"のカバーは、これがウクレレかと思わせる名演。必聴です。

2013年10月24日木曜日

Slack Key Jazz - Jeff Peterson (2005)

 寒くなってきたのでハワイの音楽でも聴こうかと思います。
 え、逆ですか。でもほら、昔はやった「夢のカリフォルニア」(California Dreamin'、The Mamas & the Papas、1965)は、木枯らしに凍えながら、暖かいカリフォルニアに行けたらいいなぁ、と夢見る歌でしたよね。
 同じ気分で南国ハワイの青い空を思い浮かべてみようかと思うわけです。
 とは言っても、さすがにフラダンスの気分ではないのでこの辺から。
 ハワイ音楽独特のスラックキーギターという奏法でJAZZのスタンダードナンバーをカバーしたアルバムです。そういう組合せなら秋の気分にもぴったりでしょ。
 どこかで聴いたことのある曲ばかりなのですが、スラックキーギターの独特のアレンジにかかると、みな初めて聴く曲のように感じます。渚に寄せる波のような、ココヤシの葉の間を抜けていくそよ風のような、ゆったりとした心地よい響きにうっとりとさせられます。
 ハワイの海風を頬に感じながら、特別な人と素敵なレストランでくつろいでいるような雰囲気になれる、かな。

2013年10月23日水曜日

老人とカメラ―散歩の愉しみ - 赤瀬川 原平 (1998)

 「口でははうまく言えないけれど、良いものはイイ」と思うことがあります。
 若いうちは何事も頭で考えて言葉や理論で説明しようと努力するのですが、それがうまくできず力尽きた時に、多少の敗北感を感じながらそう言うのです。
 年をとって頭がぼんやりしてくると、 はなから頭を使うのをやめて、あるがままを受け入れ、素直に感動することができるようになりました。それを赤瀬川さんは「老人力」と表現しています。
 ただぶらぶらと歩くだけだった散歩に、「トマソン」や「路上観察学」という芸術論や考現学の考え方を持ち込んだ彼も、老人力がつくと「路上で予想もしないものにぶつかり、(中略)カメラを構えてシャッターをパシン。頭が考えるのはそれからだ。」というような散歩をするようになりました。
 そうして集めた、頭よりも先に体が反応した景色(写真)に、頭とは別のところで考えたような文章が付いています。それが面白い、と言うか、感慨深い、と言うか、何とも不思議な味わいがあります。
 デジカメやカメラ付き携帯が普及して、誰もがスクープでも感動の絶景でもない普通の写真にちょっとした文章を付けてBLOGに発表するようになりましたが、この境地に辿り着くのはなかなか簡単ではありません。
 手本にしたくても真似のできない、でもいつかはこうなれたらいいな。そんなことを思わせる写真であり文章であり赤瀬川さんなのでした。