2013年12月24日火曜日

One Wish : The Holiday Album - Whitney Houston (2003)

 いよいよ今日はクリスマスイブ。昨日までの3連休にクリスマス関係のイベントは済ましてしまったという方も多いことでしょう。でも、やっぱり今日は特別な日ですよね。
 そんな日に選んだのは、昨年惜しくもこの世を去ったホイットニーの一枚。キリストの誕生を祝う聖夜にふさわしい絶唱を聞かせてくれます。
 浮かれたパーティーソングや、恋の歌はありません。クリスマスの基本に帰る讃美歌の数々。絶頂期の力強い歌声は控えめですが、デビュー当時から折り紙付きだった歌唱力は健在です。
 最後を飾る"Joy To The World"が圧巻です。神の御子が今宵生まれたもうた。その喜びが世界中にあふれている。うれしくてうれしくてもう我慢ができない、という彼女の歌声に圧倒されます。
 クリスチャンではない方も、神の福音に感謝したくなるクリスマスアルバムです。

2013年12月23日月曜日

A Very Special Acoustic Christmas - Various Artists (2003)

 北島三郎は出場50回目になる今年を区切りに、年末の紅白歌合戦から引退するそうですね。サブちゃんや石川さゆりなどここでしか聴けない(?)人がしぶとく選ばれて演歌や思い出の歌謡曲を聴かせてくれるのも紅白の魅力の一つですが、きゃりーぱみゅぱみゅやももいろクローバーZなど、新しい人たちに出場歌手が入れ替わっていく時代の流れには逆らえないと言うことなのでしょうか。
 それで思い出したのがこのアルバム。Very Special Christmas シリーズの第6弾は、これまでとは異色なカントリー/ブルーグラスバージョンでした。
 Internetで検索しても日本語ページが見つからないような、しかも写真を見ると結構年季の入ったアーティストばかりですが、あちらでは広い年代に人気のある方々のようです。
 クリスマスアルバム以外でこのジャンルの音楽を聴くことはほとんど無いのですが、最近になって、こう言うのも悪くないなぁと思うようになってきました。年をとると演歌を聴くようになる、というのと同じ傾向なのでしょうか。
 タイトルにあるとおりの、ギターやバンジョー、マンドリン、フィドルなどのアコースティックな演奏が耳に優しく、ベテランたちの味のある歌声も素敵です。雰囲気は学生時代に親しんだフォークに似ていますし、そういえば子供の頃に夢中になった西部劇の中ではこんな音楽が流れていました。
 そんなことを思い出しながら、ラジオで音楽を聴いていた昔のように、iPhoneの内蔵スピーカーで聞くのがオススメです。

2013年12月21日土曜日

Acoustic Christmas - Various Artists (1990)


 神の御子が今宵しもベツレヘムに生まれたもう
 聖夜、この知らせを聞いた羊飼いたちは敬虔な心持ちに打たれ、天使たちと共に神の御名を賛美するのでしょう。
 Art Garfunkelの"O Come All Ye Faithful"を聴くと、そんな光景が目に浮かびます。透き通るような歌声が星空に吸い込まれていきます。いろいろな人がこの曲をカバーしていますが、この雰囲気は独特です。「天使の歌声」と言われる彼ならではのパフォーマンスですね。
 このアルバムにはもう一曲、Marcus Robertsのピアノソロによるバージョンも収録されています。一つのアルバムに同じ曲で別のアーティストのテイクが入るのは珍しいです。
 アルバムジャケットは星降る夜の平原に張られたテントでしょうか。中では暖かな火が焚かれているのでしょう。絵本の一ページのようなこの絵が、アルバム全体の雰囲気をよく表しています。
 外に出て、星空の向こうから天使が降りてくるのを待ちたくなる、そんな一枚です。

2013年12月20日金曜日

7 O'Clock News/Silent Night - Simon and Garfunkel (1966)

 この季節になると、いつもどこかで流れている"Happy Christmas (War Is Over)"。発表された1971年にはまだベトナム戦争は終わっていませんでした。でも、君が願うなら戦争を終わらせることだってできるんだよ。John Lennonは、そう歌ったのです。
 その5年前、サイモンとガーファンクルは、反戦運動に不快感を示す政治家のコメントや殺人事件を伝える7時のニュースに"きよしこの夜"をかぶせて、こんな殺伐としたニュースばかりのこの時代に、呑気にクリスマスなんか祝えないよ、と歌いました。
 Paul Simonの時代には、反戦歌の多くは間接表現でしか歌うことができませんでした。けれど時代がくだって、Johnはもっと直接的に、戦争を終わらせようと声を上げました。
 こんな世の中だからこそ、クリスマスを祝おうよ。神がイエス・キリストをこの世につかわしたのは世界の平和のためなんだ。だからハッピー・クリスマス。戦争は終わらせられるんだよ。
 Johnの歌は、この歌へのReplys(返歌)だったのではないでしょうか。

2013年12月19日木曜日

Ki Ho'alu Christmas - Various Artists (1996)

 ハワイアンといえばスティールギターやウクレレというイメージがありますが、わたしはスラックキーギターが好きです。あの何ともいえないゆる~い感じ。ほのぼのとしたハワイの風土そのものという感じがします。
 そのスラックキーギターで演奏されるクリスマスソングの数々。心も体も頭も何もかもゆったりとして、師走の慌ただしさをすっかり忘れさせてくれます。さすがにWhite ChristmasやSleigh Ride(そりすべり)はありませんが、ホリデー気分一杯の素敵な演奏です。
 一仕事終えたサンタさんは、暖かいハワイでこんな音楽を聴いて一休みしているのかもしれませんね。
 Mele Kalikimaka!

2013年12月18日水曜日

Ghosts of Christmas Past - Various Artists (2007)

 ジャケット写真はクリスマスツリーに飾るボールですが、縞々の感じが木星みたいに見えます。背景も暗くて宇宙空間みたいです。しかもタイトルが「クリスマスの過去の亡霊」。ディケンズの「クリスマスキャロル」に出てくるあれですね。
 はっきり言って、ハードル高いです。Wham!やMariahを聴き慣れている耳には拒否反応が出てしまうかもしれません。
 ベルギーのCrepusculeというレーベルから1981年に出たコンピレーションアルバムの再版です。当時から通好みの印象のあるレーベルでしたが、時代が変わってさらにその感が強くなったかもしれません。
 当時よく聴いていたAntenaの名前を見つけて手にしたものの、ほかに名の知れているアーティストといえばAztec Cameraぐらいでしょうか。曲調も暗いものが多くてジャケット写真のイメージ通り(?)です。ネオアコって言うんですか、詳しくないですけど。
 でも、こういう多様性がヨーロッパらしいかな、とも思います。海鞘(ほや)や海鼠(ナマコ)が好きな人ならこの味がわかるのではないでしょうか(意味不明ですか)
 3回聴くとやみつきになります。 

2013年12月17日火曜日

Maybe This Christmas Too ? - Various Artists (2003)

 一世を風靡した落ちゲーの傑作「ぷよぷよ」シリーズは、2、3、4、5のタイトルが「ぷよぷよ通」「ぷよぷよSUN」「ぷよぷよ~ん」「ぷよぷよフィーバー」(苦しい!)とダジャレになっていました。
 そんなことをするのは日本だけかと思ったら、この"Maybe This Christmas"も、Too、Treeと続いています。かわいいジャケットと合わせてニヤリとさせられました。
 カナダのNettwerkレーベル所属アーティストたちによるコンピレーションアルバムなのですが、発売当時は知らない人たちばかりだったので、ジャケットが一番かわいかったTooを買いました。オリジナル曲が多く、バリエーションもいろいろなので新鮮に楽しめます。
 もう廃盤になってしまいましたが、今にして思えばColdplayやJack Johnson、Ben Folds、Sarah McLachlanがはいったfirstも買っておけば良かったと悔やまれます。

2013年12月15日日曜日

Santamental - Steve Lukather (2003)

 どういうわけか、今日現在このサイトで閲覧数No.1の記事は"Merry Axemas vol.2 (more guitars for Christmas)"。といっても、3年で5、000ビュー程度のなかの一位ですからたいしたことはないのですが、なぜなのかその理由が気になります。
 で、そのアルバムにも参加していたSteve Lukatherのこちらはどうでしょうか。
 サンタクロースの格好をした変態おじさんみたいなジャケットですが、わたしの持っているバージョンではクリスマスの夜空に9本のフェンダー・ストラトキャスターが飛んでいます。それまで本人の顔を知らなかったので、ジャケットを開いてスーパーマリオみたいなおじさんの写真を見た時にはびっくりしました。
 1曲目のVan Halenとのギターバトルは鳥肌もので、"Merry Axemas 3"的な内容かとも思ったのですが、2曲目はまた違ったテイストでおやっ、と思わせます。3曲目はなんとSammy Davis Jr.との競演!?
 バリエーション豊かな、ロックあり、フュージョンあり、ビッグバンド風の曲もありの、それこそサンタクロースの袋みたいにいろんなおもちゃ(曲)の入ったクリスマスアルバムです。
 最初はそれで散漫なイメージもあったのですが、聴くほどに味の出てくる、彼の多才さを楽しめる粋な一枚だったのでした。

2013年12月13日金曜日

All I Want for Christmas - Tommy Emmanuel (2011)

 わたしの持っている輸入盤では、白髪混じりのおじいさんがコーヒーカップを片手に微笑んでいる写真がジャケットに使われています。おじいさんといっても当時は55才ぐらい、今のわたしと同じぐらいでしたね。
 予備知識もなく、その温かそうな写真に惹かれて手に入れたのですが、実は「アコギの神様」といわれている凄い人だったようです。
 あっ、「あこぎな商売」ではなく「アコースティックギター」のアコギですよ、お間違えなく。
 ジャケットを裏返すと、サンタクロースのような髭のおじいさんと二人で楽しそうにギターを弾いている写真が載っています。このJohn Knowlesと二人、曲によってはストリングスなども加えて、写真イメージの通りの優しく温かな演奏を聴かせてくれます。
 「神様」という称号から凄テクの超絶プレイを期待すると肩すかしを食らいますが、この心地よさはまさに神様に守られて迎えるクリスマス、という感じでしょうか。
 おじいちゃんの膝の中で小さな女の子がサンタさんの絵本を読んでいる。そんな幸せな家庭の雰囲気がどの曲からもあふれている素敵な一枚です。

2013年12月10日火曜日

Christmas Meets Cuba - Klazz Brothers & Cuba Percussion (2012)


 キューバ音楽といえば、"アァァァァ~、ウゥッ!"という掛け声で有名な"Mambo No.5"。ノリのいい、陽気でにぎやかな音楽という印象がありますが、そればかりではありません。
 このアルバムでは、名前の通り、クリスマスソングをキューバ風にアレンジして聴かせてくれます。ピアノトリオにパーカッションのバリエーションが増えた構成で、ラム酒を生(き)ではなくカクテルにして飲むような、ちょっとおしゃれな雰囲気。ブラスがないのが物足りないような気もしますが、みなさんはどうでしょうか。
 演奏しているのはドイツのグループ。Meets Cubaシリーズで、ほかにもクラシックやジャズの名曲をキューバ風にアレンジしています。それなりの雰囲気は伝わるのですが、葉巻を吸ってラム酒を飲んでいる人の音楽ではないかな。やっぱり雪が降る国の人にラテン音楽は無理なのかも、と少し思いました。
 別物として聴けば、素敵な演奏です。
 フランス人が歌うボサノバみたいな感じ…かな?

2013年12月5日木曜日

Boogie Woogie Christmas - The Brian Setzer Orchestra (2002)

 "ゴキゲン"なんて言う形容詞は、今の人は使わないのかな。
 でも、"cool"じゃピンと来ないんだよなぁ。
 死語だろうがなんだろうが "ゴキゲン"としか言いようのない、元気いっぱいで、ノリが良くて、楽しいクリスマスアルバムです。
 オーケストラを名乗っていますが、もちろんクラシックではありません。ビッグバンドを率いてBrian Setzer がノリノリのロックギターを弾きまくっています。
 Elvis Presleyが女の子たちをとろけさせていた'50sを彷彿とさせる懐かしい感じ。ジャケットにデザインされたテールフィンのあるアメ車のソリがかっこいいですね。
 頭で曲を作ってない、というと失礼な感じになってしまいますけれど、なんか最近の歌は小難しくっていけねぇや、と江戸っ子風に言ってみたくなる時には、ぜひこのアルバムを聴いて気分を晴らしましょう。

2013年12月3日火曜日

James Taylor at Christmas (2006)

 しんしんと雪が降り積むホワイトクリスマス。もしも、暖炉もなにも、暖まれるものが何もない部屋に一人ぼっちになったとしても、JTの歌声が柔らかな毛布のように優しく温かく包み込んでくれるから大丈夫。
 そんな心温まる雰囲気のクリスマスアルバムです。
 代表曲"You've Got a Friend"(1971)のイメージが強いせいか、どんなに辛いことがあっても、彼なら助けてくれそうな気がします。クリスマスを一緒に過ごす人がいなくても、あるいは、クリスマスの夜に大事な人と喧嘩してしまうとか、そういうトラブルがあったとしても、心配することはないよと温かく抱きしめてくれる気がします。
 わたしは男、それも50をはるかに過ぎているというのに、JTの歌を聴くと自分が女子高生になったような気がしてドキドキします。冬休みにおかあさんの田舎に帰って、優しいおじいちゃんに会って甘えているような、安心してほんわかとしてなんだかとってもうれしい、そんな気持ちになってしまうのです。

2013年12月1日日曜日

Exit Through the Gift Shop - Banksy (2010)

 私が新聞を読んでいる横で、たまたま息子が観ていたビデオです。
 スプレー缶で街中に落書きをするグラフティアーティストたちを追ったドキュメンタリー映画かと思ってみていたのですが、とんでもない結末に驚かされ、笑わされ、そして考えさせられました。
 ドキュメンタリーなのか、創作なのか、彼らの作品同様、怪しくて反社会的、そしてユーモアにあふれた作品です。
 L.A.で古着屋を経営する男がカメラに興味を持ち、街にあふれるグラフィティを撮り始めます。完成した作品だけではなく、その制作過程も追いかけるようになり、いつしかアーティスト達に一目置かれる存在になっていきます。そして、ついに伝説の男バンクシーに出会って彼と行動を共にするようになっていくのですが…。
 ストリートアーティスト達の活動のほとんどは違法行為ですから、彼らが表に出てくることはほとんどありません。またその作品も、いつかは、時には公表のその瞬間に、消されてしまう運命にあります。なかでもバンクシーは覆面作家として謎の存在でした。
 そんなアーティスト達の活動を追った前半部分は興味深く、面白いものでした。イスラエルとパレスチナ自治区を隔てる分離壁にも作品を残したというバンクシーの素顔がいよいよ明かされるのか!と期待して観ていると、話はあらぬ方向に急展開。
 さてこの後は、是非、自分の目で確かめてください。「自分の目で」。これがキーワードです。
 本当は、私と同じように全くの予備知識無しで観ることをオススメしたいのですが、もうここまで読まれた方にはある程度の知識がついてしまいましたね。私のレビューだけでは足りずに、もっと情報を求めて検索してしまうかもしれません。できればそれは観た後にすることをオススメします。

 あっ、そうそう。美術館に行くと帰りにミュージアムショップでいろいろ買ってしまいますよね。映画のタイトルはそこから来ているようですよ。

2013年11月23日土曜日

12.25 - Kyle Pederson (2011)

 タイトルはもちろんクリスマス当日の日付です。
 イブではなく、キリストの生まれたその日。楽しかったクリスマスパーティーの翌朝、静かに敬虔に迎える聖なる日のイメージそのままに、一音一音を丁寧に紡ぐように奏でられる素敵なピアノソロです。
 まっすぐに伸びた針葉樹の林に降り積む雪。アルバムジャケットのストイックなビジュアルが、その内容を的確に表現しています。余計な枝葉のないシンプルな演奏ですが、深い森の中に眠るたくさんの命と共にあるような温かみが感じられます。心の中が雪景色のように真っ白に透明になっていきます。
 曲名はよく知られたものばかりですが、彼独特の解釈でアレンジされた演奏はオリジナルかと間違えるほど新鮮に聞こえます。
 神の誉れを高らかに外に向かって歌うのではなく、その恩寵を受け止めて、その感動を心の中で大事に温めている。そんな、穏やかな気持ちで迎えた25日の朝の心象風景でしょうか。

 このアルバムは、2年前の発売当時から気になっていたのですが、日本版CDの発売はなく、海外版での購入も難しかったので初めてMP3ダウンロードで買いました。若い人には当たり前のことも、古い人間には抵抗があるもの。形があって手で触れるものがないと不安になるので今までためらっていたのですが、これからの時代、新しいことにも挑戦していかないといけませんね。

2013年10月29日火曜日

From Here to Now to You - Jack Johnson (2013)

 明るいうちに仕事から帰って家でゆっくりしたいものです。満員電車に揺られてやっとこさ帰った家で、飯喰って寝るだけ、というのは寂しいじゃないですか。土日以外にも、趣味の時間や家族・友人との時間を取れるような生活がしたいです。
 夜勤明けの日は、ちょっと意味は違いますが、家に帰ってもまだ(と言うかもちろん)明るいので、日勤の日に比べて仕事の後の時間をゆったりと過ごせるような気がします。自転車通勤でいい具合に気持ちがスローダウンするのも良いのかもしれません。陽の光の下では、アコースティックというかオーガニックというか、自然でスローな雰囲気の時間を過ごすのが気分です。
 天気が良ければ庭にテーブルを出して、ビールでも飲んでぼんやりと過ごしたい気分になります。

 おんぼろのピックアップトラックをガタピシいわせながらヒゲ面の男が帰ってきました。夕飯まではまだ時間があるので、ポーチに腰をおろしてギターを弾いています。遊びに行っていた子供達も帰ってきました。お帰り、今日はいい日だったかい。高台にある家の前には広々とした海が見えます。水平線の向こうに、今、静かに日が沈もうとしています。
 そんな感じでJack Johnsonが歌っています(そんな感じ、です、あくまでもわたしの想像)。アコースティックな演奏にのせて静かに、優しく、そして楽しく。ささやかな日々の中の幸せなひとときが感じられる歌声です。

 おっと、ちょっとうたた寝をしてしまったようです。気がつくとギターを弾いていた彼がこっちを見て笑っています。にっこりと、優しく温かい笑顔でした。

2013年10月27日日曜日

Hawaiian Suite - Ohta-san (Herb Ohta、2002)

 あったことのない外国の方にメールを書く時に、名前に"Mr."を付けるか"Ms."にするか迷います。
 その点、日本なら誰でも「様」 ですむので便利ですね。海外の方でも多少日本の事情が分かっていそうなら、John Smith-samaと書くことがあります。
 ウクレレ奏者のHerb Ohta は、さん付けのOhta-sanで親しまれています。John Lennonn を Lennonn-san という人はいませんが、オータサンのあったかで優しい音楽を聴いているとついさん付けで呼びたくなる、それが自然に思えてくるから不思議です。
 さてこのCD、一曲目がピアノのイントロから始まって驚きます。あれ、ウクレレじゃないの?、ハワイじゃないの?
 JAZZYな演奏ですが、紛れもないハワイアン。ピアノ・トリオを従えて、素敵なウクレレ演奏を聴かせてくれます。
 ラグジュアリーなリゾートの夜、街に置いてきたあれこれも、昼間の浜辺の喧騒も、みんな忘れてオータサンのウクレレを聴きながら、ハワイの陽に灼かれて火照った体を冷ましましょう。明日は街に帰るのかな、それともキラウエアに溶岩を見に行きますか。
 いいえ、明日の話は明日のこと。今晩はオータサンの演奏に酔いたいの。そんな感じの音楽です。

2013年10月25日金曜日

Crosscurrent - Jake Shimabukuro (2003)

 ハワイのウクレレを聴いてのんびりしたいなぁ、と思っていると肩透かしを食わされます。肩透かしと言うよりはしっぺ返しと言うべきか。とにかく、世の中一般のウクレレのイメージと違うのは確かです。
 それをはずれと言うか当たりというかはあなた次第。わたしには当たりでした。
 ジミヘンとかジェフベックに憧れていたギター少年が、ウクレレを持ったらこんな感じになるのかな。でも、ハワイのゆるーい感じも残っていて、全力疾走しきれずに時々昼寝しちゃうみたいな、不思議なアルバムです。
 以前テレビ東京系で放送していた「空から日本を見てみよう」(現在はBSジャパンに移動)でもこの中から選曲されたBGMが使われていました。そんな、雲になって地上を眺めるような雰囲気のゆったりとしたイージーリスニングから、ハードロック風の曲まで幅広いアレンジの曲が、ちょうどイイバランスでまとめられています。なかでもChick Coreaの名曲"Spain"のカバーは、これがウクレレかと思わせる名演。必聴です。

2013年10月24日木曜日

Slack Key Jazz - Jeff Peterson (2005)

 寒くなってきたのでハワイの音楽でも聴こうかと思います。
 え、逆ですか。でもほら、昔はやった「夢のカリフォルニア」(California Dreamin'、The Mamas & the Papas、1965)は、木枯らしに凍えながら、暖かいカリフォルニアに行けたらいいなぁ、と夢見る歌でしたよね。
 同じ気分で南国ハワイの青い空を思い浮かべてみようかと思うわけです。
 とは言っても、さすがにフラダンスの気分ではないのでこの辺から。
 ハワイ音楽独特のスラックキーギターという奏法でJAZZのスタンダードナンバーをカバーしたアルバムです。そういう組合せなら秋の気分にもぴったりでしょ。
 どこかで聴いたことのある曲ばかりなのですが、スラックキーギターの独特のアレンジにかかると、みな初めて聴く曲のように感じます。渚に寄せる波のような、ココヤシの葉の間を抜けていくそよ風のような、ゆったりとした心地よい響きにうっとりとさせられます。
 ハワイの海風を頬に感じながら、特別な人と素敵なレストランでくつろいでいるような雰囲気になれる、かな。

2013年10月23日水曜日

老人とカメラ―散歩の愉しみ - 赤瀬川 原平 (1998)

 「口でははうまく言えないけれど、良いものはイイ」と思うことがあります。
 若いうちは何事も頭で考えて言葉や理論で説明しようと努力するのですが、それがうまくできず力尽きた時に、多少の敗北感を感じながらそう言うのです。
 年をとって頭がぼんやりしてくると、 はなから頭を使うのをやめて、あるがままを受け入れ、素直に感動することができるようになりました。それを赤瀬川さんは「老人力」と表現しています。
 ただぶらぶらと歩くだけだった散歩に、「トマソン」や「路上観察学」という芸術論や考現学の考え方を持ち込んだ彼も、老人力がつくと「路上で予想もしないものにぶつかり、(中略)カメラを構えてシャッターをパシン。頭が考えるのはそれからだ。」というような散歩をするようになりました。
 そうして集めた、頭よりも先に体が反応した景色(写真)に、頭とは別のところで考えたような文章が付いています。それが面白い、と言うか、感慨深い、と言うか、何とも不思議な味わいがあります。
 デジカメやカメラ付き携帯が普及して、誰もがスクープでも感動の絶景でもない普通の写真にちょっとした文章を付けてBLOGに発表するようになりましたが、この境地に辿り着くのはなかなか簡単ではありません。
 手本にしたくても真似のできない、でもいつかはこうなれたらいいな。そんなことを思わせる写真であり文章であり赤瀬川さんなのでした。

2013年3月8日金曜日

宇宙人東京に現わる - 島耕二 (1956)

 調布映画祭が始まりました。
 残念ながら土日は出勤なので金曜日の夜の会に、日本初の総天然色(つまりカラー)特撮映画を観てきました。あの岡本太郎が宇宙人のデザインをしたという評判だったのですが、クレジットでは「色彩指導」となっていました。今のカラー映画に慣れた目にはどこが太郎的なのかわかりませんが、当時の反応はどうだったのでしょうか。
 巨大なヒトデ型の宇宙人・パイラ星人が東京に現れます。彼らの目的は地球人に原水爆の開発をやめさせること。唯一の被爆国である日本の国民ならばわかってくれるだろうと期待していたのですが、その容姿が災いして話を聞いてもらえません。
 そこで美人歌手に変身して日本の科学者とのコンタクトに成功するのですが、今度は世界が日本の意見を聞いてくれません。
 地球を襲う流星Rが現れてやっと世界が危機に気づきます。ところが、世界各国の核ミサイルを撃ち込んでも流星を破壊することができません。世界中の核兵器を撃ち尽くしたところで、日本の科学者が発見した新元素を用いたミサイルでパイラ星人が流星を破壊し、地球は救われるのです。
 超B級のゲテモの映画かと思いましたが、なかなかに示唆に富んだ内容で驚きました。東宝のゴジラ(1954)に続いて、大映も宇宙人もので反核を訴えたのです。しかし地球を救ったのはその核をも越えるエネルギーをもった新元素だったという皮肉。戦後間もないこの時期ならではの作品でした。