2012年6月5日火曜日

未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind) - Steven Spielberg(1977)

 これは狸に化かされて、狐が憑いたアメリカ人の話です。そんなことを言ったらスピルバーグや多くのファンに怒られそうですが、最近、唐突にそんな考えが頭に浮かんできました。
 物語の冒頭に登場するバリー少年の家は、広い農場か原野のただ中にあって、夜の闇の中では地上には何も見えず、満天を覆う星の光が不気味に思えるほどの寂しい景色がまわりを包んでいます。日本なら竹藪や葭原の陰から出てきたもののけに化かされるところですが、だだっ広いアメリカに何かが隠れるような物陰はありません。だから空が怖い。幾千の目で見つめられているような星空が怖い。
 そんな闇夜に化かされて出会うのは妖しく色っぽい女性ではなくUFOなんだろうな、そんな気がしたのです。
 もののけ(あるいは宇宙人)たちは恐ろしいもの、あるいは人をたぶらかす悪いヤツのように思われがちですが、昔の人はそれを敵対するものとは考えず、同じ世界に生きる仲間として畏れ敬ってきました。そして、人智の及ばないことがらを物語にしてうまく処理する知恵も持っていました。「昔の人」と書きましたが、今もそういう人はいるでしょう。われわれが迷信や絵空事と思っていることも、ある時点、ある観点では真実なのです。

 「狸に化かされた」と言って、超自然現象を素直に受け入れられる人たち。彼らが目が覚めるまでに見た夢物語を聞いて、暗闇の無くなった現代都市に生きているわたしたちは、暗闇と一緒に何か大切なものをなくしてしまったんじゃないか、と気づきます。そして、その物語に懐かしさと、心温まる思いを感じるのです。

We are not alone.
あなたは信じますか。

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