2012年1月6日金曜日

Memento − Christopher Nolan(2000)

 古い友人たちからの年賀状を懐かしく見て、昔のことを思い出そうとするのですが、「楽しかった」という気持ちは憶えているのに「具体的に何が楽しかったのか」を思い出せなくて困りました。旅行に行って良い景色だったと感動した場所も、その映像が記憶に甦ってこないことがよくあります。
 人生も半世紀を過ぎると、物忘れがひどくなって情けないですね。
 認知症の患者は、自分が何に対して怒っているかは忘れてしまうのに、「不愉快だった」という感情の記憶だけはしっかりと残るのだそうです。怒りと猜疑心のなかで暮らす毎日は、本人にも介護をする人たちにも辛い日々になります。
 「メメント」は、(認知症とは違いますが)10分間しか記憶が保てない病気に冒された主人公が、殺された妻の復讐をする物語です。復讐を果たしたシーンから、彼の記憶に残る10分単位に時間を遡る斬新な映像手法によって、緊張と意外性に富んだストーリーが語られていきます。10年前に見た時にも衝撃でしたが、冒頭に書いたような経験をした今は、なおさらにその内容が重く感じられます。
 DVDでは時系列に見ることもできるので、見ているうちに話の筋がわからなくなって、自分の物覚えの悪さを嘆くことになった場合には助かります。でも、この映画は逆さに見るからこそ面白いんですけどね。

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