2012年1月13日金曜日

Paris,Texas - Wim Wenders(1984)

 パリとテキサス、ではありません。二つの地名ではなく、テキサス州パリスという町の名前。でも、二つの地名としての意味も匂わせている、そんな感じがします。
 「パリ」から想起される「女性的」「華やか」「繊細」「奔放」などのイメージと、「テキサス」に付随する「男性的」「武骨」「粗野」「不器用」といったイメージの相容れない悲しさを、ヨーロッパの女優とアメリカの男優が演じ分けています。
 主人公トラヴィスは、いつか家族と住む家を建てようと思って買ったテキサス州パリスの土地のポラロイド写真を大事に持っています。しかしそこに写っているのは、荒野の真ん中に立つみすぼらしい看板だけ。お世辞にも、スイートホームを建てるようなところには見えません。
 オープニングのシーンでトラヴィスがさまようテキサスの荒野とポラロイドに写っているなにもない場所は、そのまま彼の心象風景でもあるのでしょう。映像に絡むライ・クーダの音楽が絶妙です。
 父と子が、別れた妻・母を捜して旅に出ます。最初はぎこちなかった父子の関係が道行きの中で修復され、お互いの傷を乗り越えて幸せな家族になっていく。ダメ父は立ち直り、子供は一回り大きく成長して自分の進む道を見つけて歩み始める。アメリカ映画ならそういう展開になりそうですが、ドイツ映画ではそうなりません。トラヴィスは今も荒野を歩いています。
 カンヌ映画祭でグランプリを取り、日本でも高い評価を受けましたが、アカデミーにはノミネートもされませんでした。アメリカ人には分からない映画、…なのかもしれません。

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